物 語
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![]() トリスタンは名を偽ってイゾルデの手当を受け一命をとり止めるが、すぐに姿を消してしまう。運命の歯車はこの時、かすかなきしみを立て、狂い始める。 コーンウォールでは、戦いに勝ったはずのトリスタンが帰らず、トリスタンの死と跡つぎを失った二重の悲しみに心を閉ざしたマルク王の前に、一羽のつばめが飛来し、金の髪の毛を一筋届ける。マルク王の心は晴れ、国のため、この金髪の乙女を妃に迎え、跡継をもうけると宣言する。その時、傷のいえたトリスタンが帰還する。 イゾルデを迎えるための軍の先頭に、トリスタンは立たされる。アイルランドの姫に心を売ったのでないという身の証しをたてるためにと、王の重臣、アンドレ侯のはかりごとのためであった。そしてイゾルデを迎えるために、住民を苦しめる巨竜と斗って倒すが、その時、証しとして舌を切りとって行く。 イゾルデに横恋慕するアイルランドの執事ゲランはトリスタンの倒した竜の首をとり、自分が巨竜を倒したのでイゾルデ姫を妻にいただきたいと宮廷に名のり出る。驚く人々の前へ、トリスタンが竜の舌を持って登場し、真の勝利者が明らかになる。 イゾルデは、モルオルトを殺し、名をタントリスと偽って治療を受け、黙って去った男がトリスタンと知り、憎しみで胸もはり裂けそうになる。 コーンウォールへ向う船中で、イゾルデはいつか心ひかれはじめたトリスタンへの愛憎の間に悩み、母が調合した毒酒を、トリスタンと和解の盃として飲みほして共に死のうとはかる。しかし、その毒酒が、マルク王との愛の媚薬にすり替えられていたことも知らず。イゾルデの忠実な侍女、ブランゲーネの苦肉の策であった。 たちまちの死からとこしえの苦しみが、トリスタンとイゾルデを襲った。とこしえに愛の心をたち切ることの出来ない恋の薬! 運命の歯車がきしむ。微妙な歯車のきしみが、大いなる愛と苦しみを生み出していく・・・。 |