ものがたり

 「人は善意だけでは生きられない!」 という嘆きを天上で聞いた三人の神様たちが、そんなはずはないと善人を探す旅に出てセチュアンの町にやって来ます。貧乏な水売りのワンが神様の宿を探して町中駆け回ってもみんな断られ、最後に人のいい娼婦シェン・テが客を断って部屋を貸してくれます。やっと善人を見つけたと、感激した神様はお礼に千ドルを与えました。


 シェン・テはそのお金を元手に、娼婦をやめて煙草屋を開業しますが、居候になった八人家族を養ったり、貧乏な人たちに施しをしたり、失業した飛行士のスンと結婚しようとすれば彼はお金目当ての怠け者…。

 さんざん苦労の末に、店はとうとう破産しそうになります。彼女は愛するスンの子どもを身ごもっても、生まれてくる子どもを育てる事が出来ません。やつれたシェン・テは嘆きます。

「善い事をしようと思えば私たちは生きられない。生きて行く為には悪いことにも手をかさなければならなくなる‥、神様たちは何故、私たちを助けてはくださらないの?」

 シェン・テが苦境に立たされると突然、従兄弟と名乗るシュイ・タという男が現れます。シュイ・タの実力はたちまちのうちに発揮され、店の破産を切り抜けたばかりかシェン・テの為に煙草工場まで建ててやり、居候たちも労働に励むようになります。

 しかし、シュイ・タのいる時には必ずシェン・テがいないのです。親切なシェン・テが好きだった町の人々は彼女に会わせろと騒ぎ、シェン・テの行方が判らない事からとうとうシュイ・タが彼女を殺したのでは…と疑い出します。

 一同の見守るなか裁判が開かれます。
善人のシェン・テは生きているのでしょうか?
そしてシュイ・タの運命は…?