作品紹介Performing Arts

人形劇団クラルテは、乳幼児〜大人向けまで、1人で演じる人形劇〜ホールで上演する大型人形劇まで、様々なタイプの人形劇作品を製作・上演しています。会場条件や観劇人数、対象年齢等により上演できる作品が異なりますので、それぞれの作品ページで詳細をご確認くださいますようお願い致します。

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※各作品ページからパンフレットのダウンロードも可能です。
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小学生向け作品
〔会場|小学校の体育館、公共ホールなど〕

人形劇団クラルテでは、小学生を対象とした人形劇も製作・上演しています。
主に小学校の鑑賞教室での上演を行っていますが、公共ホールでの上演も可能です。

作品タイトル一覧
『いえでででんしゃ』『あらしのよるに』
『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』



いえでででんしゃ


今振り返ったら、理不尽だった事もあるし、ちょっと待てばいい事もあり、少し我慢すればすむ事もありました。
なのに、その一つ一つに腹を立てていた10代の頃。
そんな子ども達の気持ちをあさのあつこさんは『いえでででんしゃ』に乗って子ども達の心に届けました。
私達も人形劇で子どもに向かって『いえでででんしゃ』を走らせたいと思っています。

 ムジツノツミで母親に叱られ家出をしたさくら子は、家出した子しか乗れない不思議な電車”いででででんしゃ”に乗ります。中には変なしゃしょうさん。次の駅で乗ってきたのは、家出をしてきた鷹の仲間のチョウゲンボウ。その次は深海魚のリュウグウノツカイ。
 そのたびに”いえでででんしゃ”は空を飛んだり、海の底までもぐったり。しゃしょうさんはみんなの行きたいところへ連れて行ってあげると言うけれど、何だか変。それにみんなの行きたいところって・・・。
 みんなにも分からないのに、しゃしょうさんに分かるのかしら。
 疑問に思ったら、あらら、”いえでででんしゃ”の様子が変。さくら子たちはどうなるのでしょうか。

スタッフ
原作/あさのあつこ(新日本出版社刊) 脚色/松本則子 演出/宮本敦 人形美術/永島梨枝子 舞台美術/西島加寿子 音楽/一ノ瀬季生 舞台監督/梶川唱太 照明/永山康英 制作/松澤美保 写真/田嶋晢 イラスト/永島梨枝子 パンフレット制作/大條一郎

出演者
鶴巻靖子 松原康弘 梶川唱太 竹内佑子 荒木千尋 茨木新平


心が通い合う感動を生きる力に 脚色/松本則子
 私は長女で妹が二人います。二人の妹が喧嘩をして大泣きをするとなぜか私が怒られるのです。家の中を三人で大暴れをして遊んでいると堪忍袋を切らした母が怒ります。決まり文句は「姉ちゃんが悪い」
 「今からしようと思っている」のに、もう1分だけ待ってくれたら「言われる前にできた」のにと、腹を立て、自分の存在を否定されたような腹立ちを覚えていたあの頃。
 原作を読んでその頃の自分に会って、腹を立てている自分をいとおしみたくなりました。そんな心を届けたくて脚色しました。
 私のこどもの頃より何倍も人と人との関係が希薄になり、親と子の関係が社会問題になっている今の時代です。もちろんそんな甘い感傷だけで子ども達の心には届かないでしょう。
 でも本当に心が通うという感動を伝えることは出来ると思います。それが生きていくエネルギーになるという事を信じて、私の仲間で同士である子ども達にこの人形劇を贈ります。

いえでででんしゃを降りる「勇気」  演出/宮本敦
 子どもにとって、家出は勇気のいることだと思います。どうしても曲げられない想いを親の力で封じ込められた時、それでも自分を通すための最後の手段が、家出なのかもしれません。
 私の小学生の時の「いえで」は30分で終わりました。夜中に行き場もなく、隣の駐車場の陰にじっと隠れていただけでした。もちろん本当の家出とは呼べません。でもよく覚えています。家を出る時の怒りと悔しさ、隠れている間の心細さと迷い、母に見つかった時の恥ずかしさと安堵感。
 さくら子のように本当の家出をしようと飛び出すような子どもたち、私のように本当の家出とまではとても出来ない子どもたち、みんなの気持ちを乗せて「いえでででんしゃ」は走ります。その行く先は子どもたちの気持ち次第です。
 そして降りる時には、乗る時とは違う勇気が必要です。それはきっと、乗る勇気よりずっと大切な勇気です。
 この人形劇を通して、さくら子たちと気持ちを分かち合い、いえでででんしゃを降りる「勇気」を受け取って貰えることを願っています。


原作あさのあつこさんから
『いえでででんしゃ』を書いたのは、もう何年も前のことです。
 我が家の裏は小さな空き地になっているのですが、何かの理由で子どもたちをがみがみと怒鳴った後(大人って、怒鳴った理由なんてすぐ忘れちゃうんですよね。どんな言葉で怒ったかも。でも、怒鳴られた子どもたちはちゃんと覚えているんです)、ふっと、窓から外を見ると、その空き地が夕日の色に染まっていたのです。赤とかオレンジとか朱とか、そんなはっきりとした色ではなく・・・ええ、夕日色としかいいようのない色に染まっていました。
 そのとき、思い出したのです。昔、昔、わたしが少女であったころ、親にとても理不尽な叱られ方をしたことがありました(どんな理由か覚えています)。悔しくてせつなくて、このままどこかに行ってしまいたいと本気で考えたものでした。それを思い出したとたん、『いえでででんしゃ』の物語が生まれました。
 家出をする子は誰でも乗れる電車です。少女のわたしが乗りたかった電車です。この物語を書きながらもがみがみ怒ることしかできない自分が恥ずかしくなりました。
 舞台の上をどんないえでででんしゃが走るのでしょうか。楽しみでなりません。

あさのあつこプロフィール
1954年岡山県に生まれる。青山学院大学文学部卒業。岡山市にて小学校の臨時教諭を務めた後、結婚。3児の母。子育てをしながら作家デビュー。『バッテリー』(角川文庫)で野間児童文芸賞受賞、『バッテリー2』で日本児童文学者協会賞、『バッテリー』全6巻で小学館児童出版文化賞を受賞。
その他の代表作に『No.6』(講談社文庫)、『THE MANZAI』(ジャイブ・ピュアフル文庫)、『あかね色の風/ラブ・レター』(幻冬舎文庫)、『ガールズ・ブルー』(文春文庫)、『ランナー』(幻冬舎)などがある。


上演時間|1時間5分(休憩なし)
編成人数|6人
準備時間|2〜3時間
観客人数|400人程度(全学年対象)
電気容量|単相三線60A以上
※フロアーに舞台を組みます。照明、音響機材持ち込み。暗幕をご用意ください。

助成:文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)



※4月末日で上演終了※サーカスのライオン


小学校三年生の国語の教科書(東京書籍国語三年生下)採用

あの町 この町に サーカス一座がやってきたよ
火の輪のライオン 道化のピエロ
ハラハラ ドキドキ ゆかいなサーカス一座だよ

「さて、お待たせしましたサーカス一番の人気者、ライオンじんざの火の輪くぐりでござ〜い!」
じんざは三つの火の輪をくぐりました。拍手が鳴り響きます。
でも最近じんざは元気がありませんでした。生まれたアフリカの事を思い出すからです。
ライオン遣いから服を借りて、靴をはき、帽子とマフラーを付けてじんざは散歩に出掛けました。
じんざが星を見上げていると、少年が声をかけて来ました。
「おじさんは、サーカスのおじさん?」
サーカスを見た少年はライオンのじんざがしょげていたのが気になって、お見舞いに来たと言うのです。
じんざと気がつかずに、少年は、サーカスが大好きな事やお母さんが入院していて一人で留守番している事を話しました。
じんざは少年とであい、もう一度昔のように五つの火の輪をくぐろうと思いました。
明日この町でサーカス一座が最後の公演だという夜、少年のアパートが火事だという知らせが・・・
じんざは駆け出しました。


スタッフ
原作/川村たかし(ポプラ社刊) 脚色/松本則子 演出/三木孝信 人形美術/齋藤裕子 舞台美術/松原康弘 音楽一ノ瀬季生 照明/永山康英 舞台監督/奥洞昇 制作/松澤美保 写真/田嶋晢 パンフレット編集/齋藤裕子、大條一郎(デジタル編集)

出演者
菅賢吉 藤田光平 奥洞昇 齋藤裕子 曽我千尋


“じんざの”心を 脚色/松本則子
 サーカスのライオン”じんざ”は火の輪をくぐるたびにお客さんから拍手をいっぱいもらいました。それが嬉しくて”じんざ”は一所懸命火の輪をくぐってきました。”じんざ”にはよくわかりませんが、それはどうやらサーカスに来てくれるお客さんを元気にしているように思えたのです。
“じんざ”が張り切れば張り切るほどお客さんは元気になるように思えたのです。”じんざ”の相棒のライオン遣いのおじさんも同じ思いを持っているようでした。
 そうして”じんざ”とライオン遣いはサーカスで火の輪くぐりを長いことやってきたのですが、もう昔のようには跳べなくなっていることに気づきはじめました。
 引退をしなければと思っている時に一人の少年とであいました。火の輪をくぐるライオンが大好きな少年でした。その少年が火事で命を落としそうになったとき、”じんざ”は火の中をくぐりぬけ、自分の命と引き換えに少年の命を救いました。
 “じんざ”の命はそこで終わりましたが、”じんざ”の心は少年の中で生き続けていくと思うのです。少年が迷った時や、困難にぶつかった時、少年の心の中で”じんざ”は生きると思うのです。少年は”じんざ”の心を持ったおとなになって、いろいろな子ども達とであい、”じんざ”の心はその子ども達の中でも生きていくと思うのです。
 『サーカスのライオン』の本を読んで、人形劇をしている私達と”じんざ”を重ねてしまいました。そうありたいと思ってこの人形劇の脚本を書きました。


じんざの夢 演出/三木孝信
 少年はサーカスのライオンが大好きだった。
星降る夜空の散歩。人間に変装したじんざの手をしっかりと握ってくれた少年の手。握ったじんざの手は毛がもじゃもじゃで、ごつごつしていたけれど、たくましくて暖かくて、安心できた。サーカスのライオンとして生きてきたじんざはたくさんの観客たちに、生きる勇気を与え、明るい気持ちにさせていたのだ。
 少年は元気のないライオンを励ますために好きなチョコレートをポケットから出して渡した。じんざはチョコレートがあまり好きではなかったが、精一杯の笑顔で食べたのだ。じんざは少年と出会って、もう一度、五つの火の輪を飛んでみようと決心した。
 じんざがライオン遣いのおじさんとやり続けてきたライオンの火の輪くぐりの芸は、観客に生きる勇気を与えてきた。こどもたちの心にしっかりと受け継がれていることを知ったじんざの心は輝きでいっぱいだろう。
 私たちクラルテは60年も人形劇を続けてきましたが、その夢はこどもたちに生きる勇気を伝え、希望の光りを届けることでした。じんざがサーカスのライオンの火の輪くぐりでお客さんに夢と勇気を与えたように、私たちも人形劇の舞台から、じんざのように生きる勇気や希望がお伝え出来ればと思っています。こどもたちの小さな手に私たちクラルテの大人たちの夢を渡したいからです。勇気と希望の光りという夢です。


上演時間|1時間(休憩なし)
編成人数|5人
準備時間|2時間
観客人数|300人程度(全学年対象)
電気容量|単相三線60A以上
※フロアーに舞台を組みます。照明、音響機材持ち込み。暗幕をご用意ください。



あらしのよるに


日本図書館協定選定図書

暗いやみの中 声だけで知りあった
明るい光の中 声はヤギとオオカミだった
二人は友情を誓った
友情を続けるためには 仲間との戦いもあり
己の欲望にも 勝たなければならなかった
二人は永遠の友情のために歩き始めた

 がたん。暗闇に物音。山小屋の中、ヤギのメイは体をびくんとさせた。外はひどい嵐。荒い息遣いが、メイに近づいてきました。
「ひづめの音。よかった、ヤギだ。・・・すごい嵐ですね」
 メイはほっとして話しかけました。ところがそれは、足を引きずった一匹のオオカミ、ガブだったのです。
「おや、これはひつれい。真っ暗でちっとも気づきやせんで」
 二匹は嵐の過ぎるのを待っているうちに、すっかり仲良くなりました。
「おいら、よくフカフカ谷のあたりにえさを食べに行きますよ」「おやぐうぜん、わたしもですよ」
 メイは柔らかそうな緑の草を、ガブはのんびり草をはむヤギの群を思い浮かべて言いました。
「そうだ、どうです、今度お食事でも」「いいっすねえ」
合言葉は【あらしのよるに】。
 真っ青な空の下、ふたたび出会った二匹。しばらくポカンと見つめあい、やがて急に笑いだしました。
「おいら、こう見えても何より友情を大切にしてるんす」「おや、わたしもですよ」
 そう言いながら、二匹とも、ときどき自分の頭をポカポカ叩いたりして、なんだかおかしな様子。
「おいらなんて奴だ、一瞬でも友だちの事をうまそうだなんて」
「わたしはなんて奴だ、友だちがわたしを食べるつもりかも、だなんて」
 ガブはメイをさそって、お月見に出かけました。ところが、そこにはガブの仲間のオオカミたちが待ちうけていたのです。ガブとメイは洞窟に逃げ込みました。
「おいら、メイにどうしても見せたかったんでやんす。やなことなんて、みーんな忘れちまうくらい、素敵な月なんす」「わたし、ガブと話してるときも、やなことみーんな忘れてるんですよ」
「お、おいらもです」
「わたしたち、ひみつの友だちみたいですね」
 二匹はますます友情を深めあうのでした。
 ある日、ガブは仲間に「ヤギはエサだ。エサと友だちになったりしたら、俺たちは生きられないんだ」と、メイも「生まれたときから一緒の俺たちと、この間知り合ったばかりの友だちと、どっちが大切なんだ?」と、責め立てられました。
 メイとガブは決心しました。「行こう、あの山の向こうに」
 どこまでも追ってくるオオカミたち。目の前にはそびえ立つ雪山。二匹はその向こうにある緑の森をめざして歩き始めました。
 息もつけない吹雪の中へ・・・。


スタッフ
原作/きむらゆういち(講談社刊) 脚色/東口次登 演出/三木孝信 美術/西島加寿子 音楽/一ノ瀬季生 照明/永山康英 舞台監督/梶川唱太 制作/中山美津子 写真/田嶋晢 パンフレット編集/中山美津子・齋藤裕子、大條一郎(デジタル編集)
出演者
三木孝信 鶴巻靖子 松原康弘 梶川唱太 竹内佑子 荒木千尋 茨木新平


君に見せたかった満月 演出/三木孝信
 嵐の夜に一匹のヤギとオオカミが相手を仲間と勘違いして意気投合してしまった。次の日、お互いの正体を知った二匹は悲鳴をあげることもなく、ペロリと食べてしまうこともなかった。おまけにオオカミのガブはどうしてもポロポロヶ丘から見上げる満月をヤギのメイに見せたかった。いや、二人して一緒に見たかった。その満月はオオカミの宝物だったのだろう。宝物を分かち合った二匹の心は満月の光りのように明るく温かだった。
 人形劇『あらしのよるに』はヤギのメイとオオカミのガブが道案内をして、もし君がメイならどうする? もし君がガブならどうする? と立ち止まり、立ち止まり問いかける人形劇です。出会いは偶然に始まったけれど、二匹はどんどんどんどん、相手のことが気になってゆく。
 知らない怖さを乗り越えて、まず信じてみようと考えた。疑うことよりも、信じることを選んだふたりの心と身体(生命)は見違えるほどポジティブだ。一人でなら乗り越えられない困難も信じる友達がそこにいれば乗り越えられる。きっと信じることは生命の交流なのだろう。
 ある日突然、私たちは皆さんのいる場所にヤギとオオカミが棲むサワサワ山やバクバク谷を出現させます。メイとガブが暮らす山や谷に立って一緒に友達のことを考えてみましょう。道案内は岩山の崖へ、霧の丘へ、暗闇の洞窟へ。轟々と流れる巨大な滝へ、深い雪山へ、そして緑の山へ皆さんをお連れします。ゆっくりと昇る太陽や、美しい月が照らし出される小宇宙を体感して下さい。
 そして、ガブがメイに見せたかったポロポロヶ丘の上に昇る満月を一緒に見上げましょう。
 君に見せたかった満月を。


絶対に消えない友だち 脚色/東口次登
 世界の平和を目指して、友情(友好)の握手を交わした国々が、突然、握手を忘れて戦い始める。人間はなんと忘れっぽい生き物だろう。
 それともその友情は本物でなかったのだろうか。世界の一人ひとりは幸せになることを望んでいるのに、それがものすごく大きな集団になるとゆがんでしまうのだろうか。人間てなんだろう?
 もっと人間の奥底にある感情というものをじっくり表現したくて、「あらしのよるに」を人形芝居にしました。喰う喰われる関係にあるオオカミとヤギが友だちになる。だが、そのお互いの心の中はどうだろう。いつ破綻してもおかしくない状況だ。オオカミがペロリとヤギを喰っちまえばいいのだから。互いの心の中を探りあいながら、緊迫した中で友だちであり続ける二匹。その困難な道を歩むことで二匹は真の友だちになる。そして、ヤギはオオカミにいう「友だちだったことは絶対に消えない」と・・・。
 人間は友だちだったことを忘れるから戦うのかもしれない。
 「心のそこから消えない友だちが、今、絶対に必要なのだ」と思う。よく読まれている絵本ですが、二次元の絵本では味わえない、三次元の、いや心の次元もいっぱい含んだ人形芝居ならではの世界を是非ご堪能ください。
 この芝居は「あらしのよるに」シリーズ全六巻の原作を再構成して、一本のドラマに仕上げました。


クラルテに期待! 原作/きむらゆういち
 ボクは学生時代、人形アニメをクラブで作ったことがあり、NHKの「おかあさんといっしょ」のブレーン時代には、ガラクタ人形劇の人形作りのアイデアを出し、手作り人形劇の本も何冊か作ったことがあります。ですから人形劇はやったことがないかわりにいろんな形で接してきました。それはとりもなおさずボクが人形劇に関心があるという証しです。
 そこに今度は”あらしのよるに”を人形劇として上演したいという話が来た訳です。
 そもそも”あらしのよるに”は’94年に第一巻が発行されて以来、数多く公演許可の申し込みが来てそれも朗読や劇やアニメ化や影絵やテレビ・ラジオなど実に様々なところからでした。しかし不思議なことに人形劇は今回がはじめてのことなのです。
 さて、ボクは、人形劇団クラルテが、この”あらしのよるに”をどんな風な人形劇にしあげるのか今からとっても楽しみです。公開のあかつきにはぜひ会場にかけつけ原作者というより観客の一人としてこの人形劇を楽しみたいと、今からぞくぞくしています。

木村裕一(きむらゆういち)プロフィール
多摩美術大学卒業。造形教育の指導、短大講師、幼児番組のブレーンなどを経て、現在、絵本、童話の創作、戯曲、コミックの原作など広く活躍。著書は300冊以上にのぼり、数々のロングセラーは国内外のこどもたちに読み継がれている。


上演時間|1時間10分(休憩なし)
編成人数|7人
準備時間|2時間
観客人数|450人程度(全学年対象)
電気容量|単相三線60A以上
※フロアーに舞台を組みます。照明、音響機材持ち込み。暗幕をご用意ください。



小学生向け作品
〔会場|公共ホールなど〕



ムンジャクンジュは毛虫じゃない


秘密を共有し心がつながっていく こどもたち 夏の15日間の物語

「こいつは毛虫とちゃう思うねん」
 転校生の良枝は、この町では誰も行かない、行くとたたりがあると言われている「クロヤマ」へ知らずに登り、「クロヤマソウ」という珍しい花を見つけました。良枝にその花のことを教わった稔と克彦がクロヤマへ行ってみると、頂上には良枝のいうとおり、見わたす限り美しいクロヤマソウが咲いていました。
ところがこの花を二人が持ち帰った事から、町中の話題になり大人たちが我先に引き抜いてしまったのです。驚いた稔と克彦は再びクロヤマに駆けつけますが、荒れ果てた頂上には、たった一本のクロヤマソウと良枝からのSOSのメモが・・・。
 急いで良枝の家を尋ねた二人を待っていたのは、クロヤマソウしか食べない不思議ないきもの「ムンジャクンジュ」だったのです。
「みんなも秘密を守ってくれるか?」
 ムンジャクンジュは日毎に大きくなって、食べるクロヤマソウの数を増やしていきます。
クロヤマソウを集めることは、だんだん難しくなっていきました。
 三人はクラスメートにムンジャクンジュのことを打ち明けて協力を頼み、みんなもこの秘密に力を合わせてくれました。けれども、みんなで集めたクロヤマソウも数が足りず、ムンジャクンジュは・・・。


スタッフ
原作/岡田淳(偕成社刊) 脚色/吉田清治 演出/東口次登 人形美術/永島梨枝子 舞台美術/松原康弘 音楽/一ノ瀬季生 照明/永山康英 舞台監督/隅田芳郎 制作/古賀恵子 合唱/帝塚山少年少女合唱団

出演者
三木孝信 奥村佳子 西島加寿子 福永朋子 松原康弘 隅田芳郎 梶川唱太 荒木千尋、茨木新平、西本武二(声のみ)


上演時間|
対象年齢| 最適観劇人数|
会場条件|


演出のことば
「うらやましいクラス」 東口次登
 この作品を最初に人形劇にした20年前は、学校には大きな塀も無く、警備員の人もいませんでした。土曜日も学校があって、校庭では誰でも自由に遊べ、地域の人にも開放していました。学校やクラスで起きた問題も、今ほど大きなニュースとして報道されませんでした。ところが今はイジメや自殺・暴力・虐待・殺人と深刻な事件が起こっています。子どもたちは、大人と同じ目線でその悲惨な事件を知り、学校で学びながら、自分自身をも守らねばならない深刻な時代となってしまいました。家族も先生も必死です。学校はクラスの中の一人として、みんなと過ごす大切な場所だったのが、緊張を強いられる場にもなっています。本当に理想的な学校やクラスって、どのようなものなのでしょうか?子どもたちはどんな学校生活を望んでいるのでしょうか? そんな声が聞きたくなるような人形劇です。
 この芝居はムンジャクンジュという毛虫みたいな生き物を大人たちから守り育てる物語です。でも絶対一人では守れません、仲間がいるのです! 心から信頼出来る仲間が!それが5年1組のクラスです。みんなで話し合い納得して行動しあえる仲間、最後には先生も引き込まれる、とてもうらやましいクラスです。自分一人だけでなく、みんなと協力して何かをなすこと、そのためにはお互いの信頼がないとなりたちません。当たり前のことですが、これが出来ないのが現代社会です。でも、これ以上悲惨な事件が起きないためには、人と人が信じ合えることが一番だと思っています。
 こんな5年1組のような仲間がどこの学校にも生まれたらなあと願っています。そして日本や世界の政治を動かしている人たちが、こんなクラスだったら世界は平和な世の中になるのになあと、大きな夢を描いています。


原作者から
人形劇『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』を観て 岡田淳
 原作の本が出て30年、前回の舞台から20年。リメイクされ、生まれ変わったなつかしい友人に出会いました。物語の内容はわかっているのに舞台にひきこまれ、胸が熱くなり、人形劇ならではの工夫も楽しめました。
 客席には、たくさんのこどもたちがいました。ムンジャクンジュのかわいい動きや関西のことばのやりとりに、思わず出てしまうこどもたちの笑い声が、人形劇全体の色合いをさらにしあわせにしていたように思いました。
 しあわせ。そうです。この物語は、わがままな利澗追求の社会から、こどもたちが自然を守る話のように見えます(もちろんそういう要素はあります)が、じつはこどもたちのしあわせな姿をえがいたものであったということを、あらためて思いました。
 それもそのはずです。なにしろこの物語は、それを絵にかきたくなるほど、〈みんなが、楽しくて、わくわくする〉お話として生まれたのですから。
 ぼくたちが毎日のように目や耳にするニュースは、残念ながら、みんなが楽しくてわくわくするような、しあわせな姿ではありません。どちらかといえば、ふしあわせなイメージが多く積っていきます。そのような今だからこそ、しあわせな姿のイメージを持つことが必要だと思うのです。
 信頼できるかどうかなど、考える以前の友人がいる。仲間がいる。それを支えてくれるおとなもいる。舞台でえがかれるそういう関係って、つくれるかもしれない。そういう生き方って、できるかもしれない。舞台を観たあとで、そんなことを考えました。



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