人形劇『火の鳥』

公演の記録

新潟県新潟市公演
2015/7/26

兵庫県西宮市公演
2013/7/25

 


 

 

火の鳥 〜黎明編〜

ものがたり

 時は古代。クマソの国に火の中から何度でも蘇り、その血を飲んだものは永遠の生命を手に入れるという火の鳥がいた。

 火の鳥を狙う女王卑弥呼に故郷の村を焼き滅ぼされ、復讐を心に誓うクマソの少年ナギ。しかし敵の武将猿田彦に弓矢の腕を見込まれ、ともに暮らすうち、親子の情を通わせはじめる。猿田彦とともに卑弥呼から逃れ、故郷へ戻ったナギは生き残った姉ヒナクと再会する。ヒナクもまた敵の密偵だったグズリと夫婦となり、たくさんの子を生み育てていた。

  姉や幼子たちを戦いから守るため、火の鳥をしとめる決心をするナギ。一方、ヨマ国の弓の達人、天の弓彦も卑弥呼の命を受け火の鳥のもとへ向かう。そして、新たな敵、高天原族の侵略の手が迫りくる・・・!

 人の欲望が生み出した争いは、誰にも止めることができないのか。  「この世界はどうして生まれたの 人間は何のために生まれたの・・・」

演出の思い

子どもの眼が世界を変える

 「黎明編」は火の鳥をめぐる悲惨な戦いのドラマです。同様に、現代でも各地で争いは続き、子どもたちの周りにも、確実に悲惨な暴力だ増え続けています。
 今回、子どもたちへ向けて人形劇を作ることには、あまりにも現実と生々しく重なり過ぎていて抵抗がありました。しかし、「この世界はなんのためにあり、人は何のために生きるのか?」といった深いテーマを、主人公の少年ナギの目線で、オブラートに包まずに、真っ直ぐに描くことができれば、きっと子どもたちも同じ気持ちで観てもらえると思い、作品づくりを決心しました。
今、公園の滑り台やブランコで怪我をすれば、すぐに撤去される時代です。そんなに簡単に滑り台をなくすことが出来るのなら、大人たちは何故すぐに核爆弾やロケット砲や銃といった武器を撤去しないのでしょう。
 子どもたちの目からみれば、これほどおかしな論理はないはずです。この眼こそが主人公ナギの目線なのです。
火の鳥は泣き叫びます「愚かな人間たちよ、どうして同じ過ちを繰り返すの。自然からもらった生命を大切にしないの」と・・・生命を正しく使うにはどうしたらいいのかきっとナギが教えてくれるはずです。
 人形は魂がありません。劇中で生きてこそ、初めて魂がはいります。その「魂=こころ」は、実は劇を観ている観客のこころが反映されているのです。これが人形劇の特性です。ナギの「心」に映ったものは、観ている子どもたちに芽生えた「心」なのです、
 こんな世界を人形劇ならではのファンタジーで表現しようと思っています。それは火の鳥が優雅に飛び、ナギが強くたくましく生き、人形遣いたちが舞台を必死に駆け巡る姿と迫力だと思っています。

脚色・演出/東口次登

作曲の思い

火の鳥の歌

 地球は怒っている。地球が誕生して約46億年。生命体は約35億年前に発生し、そして人間の祖先が最初に現れたのはたかだか200万年前。その最後に現れた人類が母なる気球に対してしてきたことは、ただ汚染と破壊だった。
 地球上には少なくとも300万種の生物が生きていると言われているが、そのうちのただ一つの生物であるヒトのみが、生命の自然なる循環を撹乱し、いのちの源であるところの地球を痛め続けている。
 戦争が記録されなかった年があっただろうか?飢えに、戦禍に苦しまぬ子どもがいなかった時があっただろうか?
 今年も沖縄・先島諸島で公演する機会にめぐまれた。西表や宮古島の昔ながらの集落や海辺を歩き、人々のゆったりとした、素朴で豊な生活ぶりにふれると、人間の進歩ってなんだろう、と疑問に思う。
 便利さを求める思想が、大量消費賞賛の社会を是認し、さして必要でもないものを製造するために「発達途上国」の豊な暮らしを破壊し、人々を搾取し、さらに欲望は天然資源の争奪へと向かい、そしてまた戦争へと!
 動物たちが、植物たちが、そして頻発する自然災害が、今、人間に「地球生命」の危機を訴えている。僕にはその声が「火の鳥の歌に聞こえる。

作曲/ 一ノ瀬季生

手塚プロより

親子の絆を大切に

手塚プロダクション代表取締役 松谷孝征

手塚治虫は子どもたちのことを「未来人」と呼び、将来大人になる「未来人」たちに、漫画やアニメ作品を通じてメッセージを送り続けました。手塚作品の根底にはいつも「平和の大切さ」そして「命の尊さ」が訴えられています。
 手塚治虫は1928年生まれで、17歳で終戦を迎えました。大阪で空襲に出会い、戦禍を目の当たりにしたのだそうです。多くの人や家畜の死のみならず、草や木も焼き尽くされた光景に呆然とし、あらゆる生命の大切さを痛感したのです。
 今年(2008年)は手塚治虫生誕80周年を迎えます。その記念のイベントのひとつとして、今回「クラルテ」が手塚のライフワークでもある「火の鳥」を上演してくださるということは手塚プロとしましても大変有難く思います。特に黎明編は、戦争そして生と死をダイレクトに描いた作品です。そういった意味で、多少、小さなお子さんにはこの「黎明編」は難しいかもしれません。「クラルテ」がファミリー向け人形劇としてやさしく演じてくださり、親子で生きることの大切さを感じていただければ、手塚もきっとよろこんでくれると思います。
(人形劇団クラルテ「火の鳥」パンフレットへ寄せられたメッセージからの抜粋)

スタッフ

原  作 手塚治虫
企  画 三木孝信
脚 色・演 出 東口次登
人形美術 永島梨枝子、齋藤裕子(助手)
舞台美術 西島加寿子、竹内佑子(助手)
音  楽 一ノ瀬季生
特殊効果 松原康弘
振  付 隅地茉歩、阿比留修一
照  明 永山康英
舞台監督 藤田光平
制  作 中山美津子、古賀恵子
写  真 田嶋 哲

キャスト

≪登場人物≫
ナギ ウラジ ヒナク オジジ グズリ 猿田彦 卑弥呼 スサノオ 天の弓彦 ウズメ ニニギ 火の鳥 クマソの村人 邪馬台国の兵士 老兵士 老百姓 百姓女 女官 高天原の兵士 火の鳥隊
≪出演者≫
杉山芳未  奥洞昇  齋藤裕子  高平和子  松原康弘  三木孝信  西島加寿子  西村和子  菅賢吉  永島梨枝子  宮本敦  荒木千尋  福永朋子   梶川唱太  竹内佑子  鶴巻靖子  隅田芳郎  奥村佳子